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  • 2024/04/30 掲載

「アンパンマン」が安定収益すぎる理由、ハローキティに並ぶ最強キャラの壮絶誕生秘話

連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第22回)

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0~3歳の乳幼児向けのおもちゃ市場において、あのディズニーキャラですら勝つことができないキャラクターが『それゆけ!アンパンマン』だ。欧米のヒーロー像とはまったく異なる超日本的なヒーローを描いた本作は、なぜ長年愛され続けるのか。今回は、アンパンマンの作者・やなせたかし氏の生い立ちから、手塚治虫氏やサンリオ創業者の辻信太郎氏との出会い、作品誕生までを紹介するとともに、ハローキティに並ぶほど巨大なアンパンマンの関連売上の内訳を見ながら、コンテンツとしての実力を解説する。
執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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ハローキティに並ぶほど巨大なアンパンマンの関連売上。その内訳を見ながら、コンテンツとしての実力を解説する
(Photo:beeboys / Shutterstock.com)
※本作は『歴史を面白く学ぶコテンラジオ』で3/18~4/11に配信されたやなせたかしシリーズに感銘を受けた筆者が、同番組の内容や各種資料をもとに執筆した。

“ある市場”のシェアは圧倒的? アンパンマンの実力

 子供向けキャラクターとして絶大な人気を誇る『それゆけ!アンパンマン』の実力は、あらゆる調査データを見ると明らかだ。

生成AIで1分にまとめた動画
 キャラクターの認知度や好感度を調査する「キャラクターデータバンク調査2021」の結果を見ると、アンパンマンの認知度は97.6%で2位となっている(日本1位「ドラえもん」、3位が「クレヨンしんちゃん」)。

 また、商品所有度は27.2%で5位(「ミッキーマウス」「リラックマ」「ハローキティ」などに続き日本5位)、「玩具」キャラクターカテゴリーで見ると、「鬼滅の刃」「ポケモン」をおさえての堂々1位となっている。

 何よりすごいのは、幼少年齢における寡占率だ。0~2歳では男児47%/女児49%、3~4歳は男児13%(2位)/女児14%(1位)となっている。「ミッキーマウス」「トーマス」「ハローキティ」などを大きく抑え、「3歳までは誰もが必ずアンパンマン」という不動の市場を作り上げているのだ。

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玩具キャラクターの“商品所有度”ランキング
(出典:『CharaBiz DATA 2022(21)』より筆者作成)

 乳幼児向けキャラクターでここまで高いシェアを誇るキャラというのは他国でもあまり類例がない。しかもそのポジションは30年にわたって絶対的なものである。

 アンパンマンの初登場は1968年だが、単体絵本作品として登場したのは1973年。さらに1970年代後半のミュージカルを通じて普及し、「国民的キャラ」となったのは1988年の日本テレビでのアニメ化以降の話だ。1996年アンパンマンミュージアム1館目(高知県)設立も含め、実はこうして幼少期向け市場のシェアを伸ばしはじめたのは1990年代と、意外にも最近のことなのだ。

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アンパンマンのIPとしての実力とは? 関連売上の内訳を見ながら分析する(記事の後半で詳しく解説します)

 作者・やなせたかし氏は当時すでに70歳超え、完全なる遅咲きであった。彼自身が子供時代に迷子になり、お金がなく空腹で苦しんでいたときに友達と友達の母と偶然出会い、電車で帰っていた道すがら与えられたアンパンが死ぬほどおいしかった。今回、やなせたかし氏の著書『アンパンマンの遺書』(岩波現代文庫)の内容などをもとに、そうした作者の「アンパンに助けられた原体験」と自殺未遂、両親・弟との離別、戦時の飢餓状態など、壮絶な人生の中から生まれたこのヒーローについて分析する。 【次ページ】作者・やなせたかし氏の壮絶な人生

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